旧姓横島・極楽大作戦!!
十四話
「手・・・・刺さってるわね」
「刺すというより、潜るって言った方があってませんか?
見た目痛そうなのに、痛がってませんよ」
「六道クン・・・・キレてるわね」
「ええ、微笑んでいる様なんですが、何だか寒気がします。
・・・・私、幽霊なのに」
「六道のおばさま・・・・何時逃げたの?」
「ホントだわ。
先生、いつ逃げたのかしら?」
「あっ、引っ張った!!」
美神除霊事務所のメンバー(+美智恵)は、至って平和だ。
しかし、足が動かないのか、誰一人として、逃げだす者はいない。
「んっ、なんやっ!!」
六道の手には鬼道の幽体が握られており、鬼道の肉体はそのまま地面に倒れた。
「・・・・簡単な事だ。
無理矢理、幽体を引きずりだしただけだ。
これからのお仕置きには、肉体は邪魔だからな」
ドカッ!!
「僕の体になんて事をするんやっ!!」
六道は、鬼道の肉体を少し離れた所へ蹴り飛ばすと、『復』『元』『結』『界』の文珠を自分の周りに配置する。
「この結界の中なら、ある程度の傷はすぐに癒える。
いや、癒えるというのは間違いだ。
正確には、元の状態に戻る・・・・だ。
例え幽体へのダメージであろうともな。
そして・・・・・」
さらに『正』『常』の文珠を作り、再び周りに配置する。
「この文珠があれば、心が壊れる事も無い」
「・・・・何を言ってるんや!!」
「ただの説明だ。
お前がこれから受ける、お仕置きについてのな」
「・・・・お仕置きだと?
何故僕がそれを受けなければならないんやっ!!」
『磔(はりつけ)』の文珠を使い、鬼道(幽体)を捕獲する。
『縛』とは違い、霊気で作られた柱に縛りつけられている。
それだけでも、十分に痛そうだ。
「くっ!!
は、放せ!!」
「鬼道、お前は絶対に許されない事をした。
冥を傷つけ、涙までも流させた。
その事を存分に詫びるがいい」
「僕は冥子はんを傷つけたりしてへん!!
あれは、邪魔な12神将を退治してただけや!!
12神将がいるから、冥子はんが僕を見てくれないんや!!」
「貴様の勝手な妄想に・・・・冥を巻き込むな!!」
バッ!!
無数の文珠を作り、結界内にばら撒く。
「結界内に存在する文珠は、100。
一定の間隔で発動し、貴様を苦しめる。
何がでるかは俺にもわからない、お仕置き用のランダム文珠・・・・とでも言っておこう、別に何でもいいのだがな。
100、全ての文珠を使いきった時、貴様は肉体に戻れる。
もし、また冥を傷つけることがあるなら・・・・・これの2倍だ」
「なんやっ!!
お前も、12神将と同じ様に、僕の邪魔をするのかっ!!
何で、何でみんな僕の邪魔をするんやっ!!」
「・・・・・・・先程も言ったが、貴様の妄想に冥を巻き込むな」
鬼道の言葉に、六道の機嫌が更に悪くなる。
冥子極上主義の六道にとって、冥子の事を無視している鬼道の言葉は、許せるものではない。
「妄想やあらへん!!
邪魔者さえいなくなれば、きっと冥子はんも僕の事を見てくれるはずや!!」
ブチッ!!
「それが妄想だと言ってるんだ!!
闇の衝撃!!」
ドンッ!!
闇の刃が、切り裂く闇なら、闇の衝撃は、闇を纏った打撃。
しかし、ただの打撃とは違い、俗に言う所の遠当てだ。
六道の拳は、鬼道に触れていなかった。
「がはっ!!」
普通なら口から血を吐くのだろうが、鬼道は幽体だ。
血が存在しないので、吐く事はできない。
「最初に言った、肉体が邪魔だという意味は、例え傷が塞がっても流れ出た血まで戻ることは無い。
それなら、血が流れない幽体の方が都合がいいからだ」
・・・・つまり、激しく傷を負います、って事だ。
「さあ始めよう、懺悔の時間を・・・・」
『剣』、1つの文珠が剣へと変化し、鬼道に向って飛んでいく。
ザクッ!!
その剣は、鬼道の体に容赦なく突き刺さる。
!!!!!!!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
クイッ・・・・グイッ・・・・
「がぁぁぁぁっ・・・・・・!!
ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突き刺さった剣は、時に捻り、また奥へと押し込む。
ボンッ!!
かなり深く刺さった剣は、最後に破裂した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣が破裂した事により、霊体がかなり破損したのだが、復元結界の力により、弾けた霊体が元に戻っていく。
傷が塞がるのではなく、元に戻るのだ。
例えるなら、粘土で作った人形の一部が崩れた時、その崩れた部分をもとの場所に引っ付けるだけの処置と思えばいい。
だから、その崩れた部分の数が多ければ多いほど、元に戻る時間が長くなってしまう。
「いぎぎぎゃぁぁぁぁ!!」
「そうだ、その苦痛が、貴様が冥を傷つけた罰だ。
冥を傷つけたことを、その身を持って悔い改めるがいい!!」
「はーはー・・・・・・」
弾けた霊体が、やっと元に戻る。
しかし、新たな文珠が発動する。
『断』『末』『魔』『砲』
ウウゥウゥゥ・・・・・ギャァァアーーッ!!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドォォォォォン!!
4つの文珠を使って発射されたエネルギーは、鬼道の霊体を粉々にした。
しかし、粉々になった霊体も、復元結界の力により、元に戻ろうとしている。
「そろそろ冥の準備も終わった頃かな・・・・・。
俺はいなくなるが、鬼道、残り95の文珠をその身に受けろ!!」
鬼道のお仕置きも大切な事だが、冥子を待たせるのはもっと駄目な事だ。
という、非常に個人的な事情により、鬼道を残し去って行く。
「・・・・あのさ、私たちいつ帰れんの?」
「おい六道!!
俺たちを忘れんなぁぁぁ!!」
「み、美神さ〜ん・・・・」
「令子、ママもまだ動けないわ・・・・・」
美神達は、今だ動けないでいた。
しかし手は動くのだろう、鬼道が叫ぶ時、その声が聞えないよう耳をふさいでいる。
ある意味、美神達もお仕置きを受けてるのだろうか?
冥子を助けなかったという罪で・・・・・
「わ・・・・わしも・・・誰か助けて・・・・・・」
鬼道父は・・・・・・何故か黒いスコップが刺さっていた。
血が出てないところをみると、鬼道と同じ様に肉体ではなく霊体にダメージがあるようだ・・・・幽体離脱はしてないが。
「冥、れーこちゃん、準備は終わった?」
「うん〜♪」
「れーこもいいよ!!」
冥子とれーこを迎えに来た六道は、娘とその親友がいないことに気がつく。
「蛍とひのめは?」
「ん〜、見つからなかったの〜」
「おねーちゃんたち、どこかにはしっていっちゃったの!!」
たぶん昔、今の美神たちと同じ状況におかれた事があるのだろう。
どのようなお仕置きを受けているのか、目で見て叫び声を聞く、その様子をずっと見つづける・・・・・ある意味、一種の拷問だ。
で、今だ逃走中の2人は・・・・
((もういや・・・・もういや・・・・もう聞きたくない・・・・。
やめて・・・・やめて・・・・やめてぇぇぇぇぇ!!
お願いだからそんな目でこっちをみないで!!
私には、助ける事が出来ないの・・・・
だから・・・やめて!!
私を見ないで!!))
心にかな〜り深い傷を負っているようだ。
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