旧姓横島・極楽大作戦!!
二十一話
「はぁーはぁーはぁー・・・・・」
「如何した?
上位魔族に匹敵する力を持ってるんじゃなかったのか?」
六道と勘九朗・・・・いや、人と魔の戦いは予想外な事に、人・・・六道が勝っていた。
その六道は、地に膝のついた勘九朗を眺めている。
「何故?
私は人を捨て、力を欲した。
何故人である貴方に勝てない!?」
「お前が俺より弱い・・・・・・なんて事は無い。
今の、俺の霊力は大体100マイト程度だ。
人としては限界に近い数値だ。
対してお前の魔力は、2000〜3000マイトだろう・・・・・」
勘九郎に話しながら、軽く周りを見渡す。
唐巣達は、メドーサ相手に奮闘し、倒す事は出来ないが時間稼ぎは成功している。
一方横島は・・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!
こっちくんな!!
俺の肉は不味いんじゃぁぁぁぁぁ!!」
ゾンビ相手に逃げ回っていた。
(・・・・・おい。
あの時の俺じゃないんだし・・・・今のお前なら楽に倒せる相手だ。
混沌<カオス>まで貸してるんだぞ・・・・混沌<カオス>に霊力を込めて斬れば、ほぼ一撃で倒せるはずなのに・・・・・)
過去の自分を思い出して、少し頭痛がしだした六道。
気を取り直し、再び勘九郎に話しかけた。
「マイト数だけ見れば、人が魔族に勝てるはず無い。
では何故、人が魔族と戦えると思う?」
「私を馬鹿にしてるの?
力で勝てないなら、頭を使うのよ」
六道を睨むが、律儀に答えを返す。
「正解だ。
勘九郎も元は人、それもGS候補だったな。
GSが何故道具を使う?
自分の霊能力だけでも戦えるのに・・・」
道具を使わなくても、“霊波砲”等は殆どの者が使える。
「確かに自分の力だけで戦ってる人もいるわね・・・・私や貴方みないに。
何故道具を使うのか、道具を使った方が効率が良いからよ。
物によっては、威力を上げたりする物もあるからね。
で、それが何?」
「初めて使う道具を、最大限利用しながら使う事はできるか?
その道具を、長年使ってきた自分の手足のように扱えるか?」
「無理ね。
前情報も無し、練習も無し、それが出来たら化物ね。
貴方も化物の一員かしら?」
魔族になった自分に圧勝した六道に嫌みを言うのも忘れない。
「勘九郎、お前が魔族化して・・・・人であった時と何が違う?」
「そうね・・・・ほぼ全てよ。
力、スピード、スタミナ、肉体的強度・・・・・数えたらきりが無いわ」
「そうだろうな。
魔族化したお前は・・・・・魔装術を使う必要が無いんだよ。
お前は魔族化した後も、魔装術を解いてない。
魔族化したお前の肉体は、魔装術で覆われている鎧よりも防御力ははるかに上だ」
「なんですって!?」
「お前は魔族化した事で・・・・・それだけで有頂天になり、他の事が疎かになったんだよ。
魔装術を使う必要が無いのに、使いつづける。
これだけで、かなりの魔力が無駄に使われている」
また話を止め、周りを見渡した。
唐巣達は、そろそろ限界のようだ。
横島は・・・・
「殺られる前に殺ってやるぅぅぅぅぅぅ!!!!」
混沌<カオス>を振り回しながら、ゾンビ達を追い掛け回している。
先程とは逆の光景だ。
(・・・・ゾンビを追いかける暇があるなら、美神さんを助け出せ)
先程とは違った意味で頭痛がした六道だった。
再び気を取り直して勘九郎に話しだす。
無駄に長く喋っているのは、無論時間稼ぎだ。
「結論を言おう。
魔族化した事で有頂天になったお前は、魔力の大きさに気を取られ、頭を使う事を忘れたんだ。
普通なら魔装術の事も気づきそうだが、それにも気づかない。
そして、人間だった時の感覚で力を使っていた。
ゆえに、魔装術で無駄に魔力を減らした上、普通の攻撃でも無駄に大量の魔力を使用した。
また、身体能力も上がりすぎて思うように動けず、人だった頃の動きに比べ、無駄が多い。
そして、俺を倒せない事に焦りが生じ、更に大量の魔力で圧倒しようとする愚行を起こす。
人が魔族などと戦う時に大事な事は、絶対に焦らず諦めない事。
力の差が埋める事が出来ないなら、他で埋めればいい。
別にマイト数で10倍以上の差が有っても、相手に合わせる必要は無い。
自分のマイト数分だけ相手にすれば良い。
幾ら攻撃が強力でも、当たらなければ意味はが無い。
その為に、冷静に攻撃を見極め、自分の力で出来る事をすれば良い」
「何?
じゃあ、私が貴方に負けたのは・・・・只の自爆って事?」
「そうなるな。
先程道具の話をしただろ、その道具を魔族化に置き換えてみろ。
魔族化したばっかりのお前が、人であった頃のように戦えるか?」
「・・・・無理ね。
私は自分の事位わかってるわ、私は物覚えは良い方だけど、化物じゃない」
「そして、俺はお前が言うような化物じゃないぞ。
只の経験の差だ。
これでも、10年以上はGSとして働いているからな」
「10年以上ね・・・・・・随分若いようだけど、一体幾つなのかしら?
それとも、子供の時から働いていたのかしら?」
「30過ぎだ」
「・・・・・・・十分化物だわ。
若さを保つ秘訣が有るなら、教えてもらいたいわね」
勘九郎の予想では、25〜6程度。
六道は30過ぎと答えたが、正確には33歳だ。
(そうか?
十分に老けてると思うが・・・・)
六道を見て、30代と分かる者は、全くと言って良いほどいない。
皆、20代と答えるだろう。
「ふははははは!!
泣け、叫べ、そして・・・・・・・・見逃してぇぇぇぇ!!!!」
ゾンビ集団を追いかけていた横島は、体を反転させ、再び逃げ出した。
「顔崩れてんのに、平気な顔して追っかけてくんなっ!!」
倒したと思った数体のゾンビが起き上がり、無事だったゾンビ達に加わった。
先程の横島は、混沌<カオス>に霊力も込めず振り回していただけなので、特にダメージを受けてないのだ。
(くそっ!!
何だって俺がゾンビ集団と戦わなきゃいけないんだ!!)
逃げ回りつつ周囲を確認する。
横島の目には、魔族化した勘九郎とメドーサの姿が映った。
「・・・・・・・・・あいつらは嫌じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
戦う相手としては、ゾンビ集団の方が十数倍マシである。
しかし、見た目が嫌なのだ。
何より「貧弱な坊やには、戦いは似合わないんだ!!」と、本人が思っている。
『横島さん、横島さん、聞えますか?』
「その声は・・・・小竜姫様!!」
六道から預かった小竜姫の角を取り出し・・・・・「ああ、何度見ても何て色気の無い姿だ」と、つい口に出そうとしたが、ギリギリの所で踏み止まった。
『この程度の相手に何遊んでいるんですか?』
(遊んでいるって・・・・・現代っ子の貧弱な坊やには無理な注文ですよ。
ここは美神さんを諦めて、小竜姫様と愛の逃避行を・・・・・)
『何ブツブツ言っているのです?
その刀、霊刀としては、かなり強力な物のようです。
その刀なら、あの程度の敵、全く問題無いはずです』
「えっ・・・・これが?」
六道から借りた混沌<カオス>に視線を落とし、握り締めた。
『もう時間が有りません。
メドーサは遊んできるようですが、そろそろ限界です。
早くしないと、鉄針がメドーサの手に・・・』
(俺にやれるのか?)
『横島さん!!』
「・・・・・・・わかりましたよ。
やれるかどうか分かりませんが、やるだけやってみます。
横島忠夫、参る」
珍しく真剣な顔つきで、ゾンビに戦いを挑む。
(よく見てみれば、奴より動きも遅いし、攻撃も軽そうだ。
それに・・・・ここで良い所を小竜姫様に見せれば・・・・・・・・神様との禁断の愛を!!
あいつばっかりモテモテなのも気に入らん・・・俺と奴は同一人物なのに・・・・・・・ここで良い所みせれば俺だって)
やはり、完全なシリアスは、現時点では無理のようだ。
「ふはははは!!!
今度こそ・・・・・おんどりゃぁ!!」
今度は霊力を込め、正面からゾンビを切り裂く。
「こんちくしょう!!」
返し刃で、別のゾンビの首を落す。
『横島さん危ない!!』
腕を振り上げた体勢の横島に、左右からゾンビが襲い掛かってきた。
「“栄光の手”」
混沌<カオス>から片手を放し、空いた手で“栄光の手”を作り、霊波刀に形状を変え、混沌<カオス>と霊波刀を別々に振り下ろした。
すぐさま霊波刀を消し、両手で混沌<カオス>を掴む。
「2体同時にくんなっ!!」
目の前にいたゾンビの攻撃を避け、上下に切り分ける。
「これでも喰らえ!!」
混沌<カオス>を地面に突き立て、両手に“サイキック・ソーサー”を作り、数体で固まっているゾンビ達に対して投げつけた。
「これで最後だ!!
ひ〜〜〜っさつ“横島・アタック”!!!!」
混沌<カオス>を大上段に構え、自身の上半身諸共振り下ろす。
その時、混沌<カオス>に込めていた霊力を一気に解き放ち、“サイキック・ソーサー”によりダメージを受けていたゾンビ達全てを吹き飛ばした。
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜・・・・・・・な、何とかなった」
全てのゾンビを倒し終えた横島は、混沌<カオス>を握り締めたまま、その場に座り込んだ。
『横島さん、休んでいる暇は有りませんよ。
早く美神さんを助けなければ・・・・』
(そうだった、俺の勇姿を見て・・・・。
「きゃ〜っ、流石私の横島君ね」
「いえいえ、大した事ありませんよ美神さん」
「もう、二人っきりの時は令子って呼んで」
「・・・・令子」
「忠雄さん」
・・・んって事になっちゃったりして!!)
そんな期待を胸に美神の方を振り向く。
「こらーーーっ!!
六道君、んな奴の説教してないで、さっさとこっちを助けなさい!!!」
反対方向を見てました。
「やっぱ、そんなオチかよ!!」
SEO
掲示板
[PR]
爆速!無料ブログ
無料ホームページ開設
無料ライブ放送