旧姓横島・極楽大作戦!!
二十二話
「ふぅ〜・・・やっと楽になったわ」
横島に助けられ、手足の縛りから開放された美神。
ついでに小竜姫から竜気を分け与えられ、霊力を回復させた。
「ありがとね横島君」
(はっ・・・・・・こ、これは!!
ま、まさか・・・・予想と同じ展開か!?)
普段の美神から、感謝の言葉を聞くとは想像できない横島は、少し前に妄想していた通りになるかも・・・・と、ありえない期待を胸に抱き、次の台詞を口から出した。
「いえ、当然の事ですよ。
美神さん」
「あっそ・・・・じゃ、私達もいくわよ」
(えっ!?
・・・・・あ、甘い展開は?
俺の苦労は何だった・・・・・期待した俺が馬鹿だったのか?)
期待していただけ、全く何もなかった結果に落胆した。
(・・・・・・・・よし、どーせ何も無いなら、多少強引だが仕方が無い。
これも非常事態だ!!)
落胆はしたが、即回復。
そして行動に移す。
「みっかみすわぁ〜〜〜ん!!」
「時と場所を考えろ!!
・・・・・・まあ、考えても結果は変わらないでしょうけどね」
美神に飛び付こうとした横島の顔に、躊躇無く裏拳を当てて迎撃した。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
か、顔がっ!!!!」
両手で顔を抑え、辺りを転がり回る。
美神も多少拳が痛かったらしく、「ったく懲りないわね〜」と言いながら軽く手を振っていた。
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜・・・・・・・くっ」
「ちょっ、大丈夫!?
無理して私を回復させたの?」
苦しそうに胸を抑え、地面に片膝をつけている小竜姫に駆け寄った。
「だ・・・・・だ、大丈夫です。
この地では、私のエネルギーが急激に消費されているだけで、特に問題は・・・・」
(・・・・んな意味じゃないんだけど。
急激に消費って、めっちゃヤバイ気がするのは気のせい?)
エネルギーが無いだけで、特に怪我しているという事のでは無いので大丈夫です・・・・と、ちょっと心配な答えを返した。
「大丈夫ですか小竜姫様!?
この横島忠夫・・・命に代えましても貴女様を御守りする所存であります!!
成功の暁には・・・・・・・神と人との禁断の愛を!!」
「だから、時と場所を考えなさい!!」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
ままままま、また顔がっ!!!!」
2度目の裏拳炸裂。
「んっとに成長しないんだから・・・・。
ほんとにコイツ1人でアイツ等倒したの?」
「はぁ〜はぁ〜・・・・ええ、横島さん1人です。
GS試験の頃と比べると、動きが格段と良くなっています。
あと、相手の動きを良く見てました」
「師匠が良いからかな」
「・・・・・・・・六道さん?」
あえて美神とは答えない。
(今、私と六道君の間で迷ったわね。
確かに私より六道君の方が教え方は上手いと思うけど・・・・・普通、師匠って言ったら私じゃないの?)
誰に聞いても、今の横島の師匠は六道と答えるだろう。
美神の修行内容は、除霊時の荷物運びで力を鍛える・実戦で判断力等を養う・覗き時の教育的指導で耐久性UP(笑)・・・・修行?
「喋ってないでさっさと行動を起こせ!!
こっちは勘九郎・メドーサの連戦で、そろそろ限界だ!!」
緊急時というのを忘れて話していた美神・小竜姫(横島は地面で転がっている)に六道が声を張り上げた。
その直後
「余所見とは余裕だね」
「ぐあっ!!!」
メドーサの槍が、六道の肩に刺さった。
横島が美神を助けている時、六道はメドーサと対面していた。
勘九郎はメドーサから鉄針を渡され、体力・魔力の回復を待っている。
「力だけは上位魔族に匹敵する勘九郎を退けるとは・・・・貴方、ムカツクけど面白いわね」
「あれは勘九郎の自爆だ。
慣れてないのに無駄に力を使って、自分の力に翻弄されてただけだ。
俺の攻撃で、ダメージはそれ程与えてない」
「よく分かっているじゃない。
それなら、私との力の差もわかってるでしょう?
・・・・・・・・退きなさい」
六道が立っている場所は、風水盤とメドーサ達の間。
嫌がらせ・・・・モトイ、時間稼ぎの為だ。
「断る。
勝てはしなくても、時間稼ぎ位なら出来る自信はある」
「たいした自信ね。
身の程を知った方がいいわ・・・・・たかが人間の分際で魔族に逆らおう何てね!!」
踏み込んで喉を狙った突きを放つ。
六道は後ろに飛び、空中で腕を振るった。
「“闇の衝撃”」
手から衝撃波が放たれメドーサを襲うが、槍を反転させ、柄で衝撃波を弾き、もう一度反転させる勢いを利用し縦斬りで追撃をする。
「その程度の攻撃が効くとでも?」
「効かなくても問題無い!!
時間稼ぎさえ出来れば良いんだ!!
そこっ“闇の牙”」
「くっ・・・」
体を反らして避け、槍の柄に闇を纏った一撃を当ててメドーサの体勢を少しだけ崩す。
「せいっ!!」
槍につられて体勢を崩しているメドーサの顎に回し蹴りを当てる。
「続けて“闇の衝撃・弐連”」
衝撃波を2つ飛ばし、結果を確認せず、距離を取る為に後ろへさがった。
“闇の衝撃”の影響で、砂が舞い、メドーサの姿を覆い隠した。
六道は軽く腰を落し、何かあれば即座に動けるよう構え、警戒する。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
ままままま、また顔が!!!!」
場の雰囲気に合わない声が聞え、視線だけを声が聞えた方に向け、状況を確認する。
六道の目に映ったのは、転がっている横島、呑気に話している美神と小竜姫。
「喋ってないでさっさと行動を起こせ!!
こっちは勘九郎・メドーサの連戦で、そろそろ限界だ!!」
意外な光景に呆れてしまった六道は、メドーサの方に戻してしまった視線を再び美神達に向けて声を張り上げた。
その時を待っていたかのように、六道の注意が美神達に向った瞬間、メドーサが砂煙から飛び出して来た。
「余所見とは余裕だね」
「ぐあっ!!!」
避ける事の出来ない一撃。
六道は自ら体勢を崩し、心臓を狙った攻撃は、肩へと突き刺さった。
「避けれないから、わざと体勢を崩すとわね。
今ので死ねば楽だったのに・・・・。
そんな事をして、苦しみを長く味わいたいのかしら?」
「ぐっ・・・・・!!」
槍を引き抜こうと柄を掴む。
「そんな事をしても・・・・・・・無駄だよ!!」
メドーサは槍に魔力を流し、直接六道へ当てる。
これは、霊波砲のように体の外から霊的防御を超えてダメージを与えるのとは違い、霊的防御を無視して直接体の中へとダメージを与えている。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あははははははっ!!
このまま死にな!!」
一気に大量の魔力を流さず、痛みが長く続くように調整して魔力を流しつづける。
六道は痛みを精神力で押さえ込み、両手をメドーサに向ける。
「ぐっ、ぐぐっ・・・・・・・がぁぁぁぁっ!!
俺を舐めるな“漆黒の衝撃”」
無防備のメドーサに対し、渾身の衝撃波を至近距離でぶつける。
「ぐわぁぁぁ!!」
「がはっ!!」
メドーサにある程度のダメージを与え、後方に飛ばした。
六道も、目の前で起こした衝撃波の余波を受け、美神達がいる方向へと吹き飛んだ。
痛みは激しいが、そのまま寝ている訳にはいかず、傷口を抑えながら立ち上がった。
(ちっ、“文珠”をメドーサ達の前で使って、此方が“文珠”を使えると言う情報を渡したくは無い。
横島が自ら使えるようになれば別だがな。
・・・・・・仕方が無い、苦手だが自分でヒーリングするしかないか。
どうも回復系のヒーリングは相性が悪いんだよな。
癒すより壊す方があってるからな、俺には・・・)
肩に当てた手から、ほんの少しの光が生まれ、肩の傷を癒し始める。
六道が苦手と言ったように、回復速度は遅く、見た目での変化は無く、多少出血が抑えられた程度だ。
(贅沢は言ってられん。
あとは美神さん達に任せるか)
六道の周りに集ってきたGS達。
メドーサは多少ダメージを喰らったのか、“漆黒の衝撃”が当たった個所に手を当てている。
六道達の方を見たが、邪魔者がいなくなったので風水盤の起動を優先させた。
「六道君、傷は大丈夫?」
「ええ、少々辛いですが、死ぬような怪我じゃ無いので問題ありません。
けど、回復に専念する必要があるので、あとの戦闘には参加できません」
死ぬような怪我じゃないと言っているが、治療もせず放置すれば血を流しすぎて死ぬだろう。
「小竜姫、お前は妙神山へ戻れ。
そろそろこの地に留まるのも限界だろう」
「ですが、皆さんを置いて私だけ帰るわけには・・・」
「日本へ戻ってカオスのじいさんを連れて来い。
じいさん位の知識がないと、発動した風水盤を止める事は出来ない。
あと、エミさんとタイガー、そして・・・・・冥にも戦う気があるか聞いて連れて来い。
じいさんが風水盤を弄っている間、あの2人から守り通さねばならないから、少しでも戦力が多い方が良い・・・・タイガーは少し不安だがな」
「お、おい!!
冥子ちゃんを戦わせるのか・・・・・お前が!?」
横島の問いに、六道の冥子に対する溺愛ぶりを知っている面々が頷いた。
「なるべくなら冥を危険な目に遭わせたくは無い。
だが、冥が戦う意志を持つなら、俺はそれを尊重したい。
冥はプロのGSだ。
これから先、メドーサクラスとはいかないが、強敵と戦う事もあるだろう・・・・・その時の為に、今メドーサと戦う事も必要だろう。
なに、こちらの方が数が多い、それにじいさんを守り抜けば勝ちだ。
あの2人を倒す必要は無いんだ・・・・・時間稼ぎだけで良い」
冥子ちゃんの意見は聞くが、ドクター・カオスは強制参加決定。
「じゃあ、この前の鬼道の時は何だったんだ?」
「嫌がる冥を無理矢理戦わせたからだ。
冥本人が納得して戦っていたなら、自分を結界に閉じ込めてでも手出しはしない」
とりあえず、冥子ちゃん至上主義者の六道を無視し、話を元に戻す。
「今の私は役に立たない・・・・・・そう仰るんですね」
この地に留まっているだけで大量のエネルギーを失っていく中、GS達の回復を手助けしたので、小竜姫に残されたエネルギーはごく僅かしかない。
これでは、とても戦う事は出来ず、妙神山への瞬間移動1回分位しか残っていないのだ。
「そうだ・・・・と、肯定して欲しいか?」
「くっ・・・・・・。
わ、わかりました」
「そろそろ装置が完全に作動する。
今は低出力で慣らし運転をやっている最中だが、完全に作動したら、この辺りは結界に覆われ、瞬間移動で来れなくなるぞ。
時間は余り残ってない・・・・・急げ!!」
「皆さん御武運を」
小竜姫が妙神山へ移動し、今この場にいるのは・・・・六道・美神・横島・おキヌ・唐巣・ピート・雪之丞・メドーサ・勘九郎、ゾンビは横島が倒してしまったので残ってない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・・・・!!!!
「風水盤が・・・」
「作動した!?」
唐巣の言葉を、美神が続けた。
「まだよ。
臨界までは、あと少し時間がかかるけど・・・それも月の出を待つばかり」
「勘九郎!!」
「風水盤周辺ではね、既に地脈の変化が始まっているの。
感じるでしょ?
魔界から心地良いエネルギーの風が・・・・・・・とても良い気分だわ」
魔界から流れ始めているエネルギーを受け、勘九郎の回復が完了した。
「ウオォォォォォォッ!!!!」
叫び声。
「な、何て霊圧だ!?
これが勘九郎なのか・・・・・?」
ただそれだけで、美神達に膨大な霊圧を感じさせた。
「とても良い気分よ・・・・・先程以上にね。
無駄な力を使わず、自然体でいる。
ただそれだけの事なのに、体が馴染んで来ているのが分かるわ。
今の私なら、力に振り回されず、前以上の戦いが出来るわよ。
色男さん、リベンジは受け付けているかしら?」
「生憎だが、この怪我でな・・・・。
只の悪霊なら兎も角、魔族のお前相手は無理だ」
「そお?
それは残念だわ・・・・・・・なら―」
「―避けろ!!」
勘九郎が何かをするのを悟った六道は、周りに注意を呼びかけ、自らも横に飛んだ。
「死になさい!!」
勘九郎の口から巨大な霊波砲が放たれ、先程六道がいた地点を襲う。
六道が注意を呼びかけたおかげで、美神達にたいした被害は無かった。
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