旧姓横島・極楽大作戦!!
六道さんち 01話


「はい、六道さん」

 そう言って、彼女は俺にご飯に入った茶碗を渡してくる。

「ありがと、透ちゃん」

「おかわりは沢山ありますので、どんどん食べてください」

「ああ」

 この子の料理は美味い。
 そのせいなのか、普段よりも箸の動きが速い。
 ・・・・・・・・一応断っておくが、浮気じゃないぞ!
 んな事やったら命が幾つあっても足りん・・・・・・・いや、マジで!!
 まっ、俺がその気になっても相手がいないからな。

「おい!
 何でお前が当然のように透の飯食ってるんだ!!」

「やめろよ、馬鹿猫!!
 本田さんが誘ったんだから仕方が無いじゃないか」

 最初の、威勢の良い方が、草摩夾。
 後の、此方を冷たく睨んでるのが、草摩由希。

「まあまあ。
 そんなカッカしてると、透ちゃんに嫌われちゃうよ」

 で、そんな2人で遊んでいるのが、一応家主で保護者の、草摩紫呉。

「あっ、由希君も夾君も沢山食べてくださいね」

 最後になったが、この美味しい食事を作ったのが彼女、本田透だ。

「まあ、透ちゃんが誘ったのはわかるんだけど。
 何で食べにきたの?」

「・・・・・・人には知らないほうがいい事もある。
 いや、知らないほうがいいんだ!!」

 そう。
 俺が冥の手料理から逃げてきたとか・・・・。
 ゴメン、冥。
 お前の事は愛しているのだが、アレだけは止めてくれ!
 お義母さんと蛍は、美神さん所に避難し、ひのめは実家に帰りますって逃げたし、フミさんすら、有休(あるのか?)使ったて逃げ帰った。
 ・・・・・・・・何でみんな協力して、俺を捕獲するの?
 逃げ出すのに苦労したよ・・・・・・・・マジで。
 みんな酷いよ・・・・・・俺は要らない子なの?

「そ、そうなんだ・・・・・」

 俺の表情から何かを読み取ったのか、少しひいている紫呉。
 ついでに、由希と夾も黙ってくれた。
 透ちゃんは気がついてないけど・・・・・・。

 一般GSには、全く知られてない草摩家。
 しかし、六道などのビックネームには有名だ。
 誰にも解けない十二支の呪い・・・・・・・が。
 俺の文珠も、試してはみたのだが、全く意味が無かった。

「そーいう事なんで、聞かないでくれると助かる」

「まっ、良いけどね」

 紫呉、話がわかる奴で助かるよ。

「っと。
 透ちゃん、おかわり貰える?」

「あっ、はい!」

 渡した茶碗を持って、トコトコと台所に行く。
 う〜ん、かわいい・・・・・・って、もう一度言っておくが、浮気じゃないぞ、浮気じゃ。
 一般的にみて、透ちゃんはかわいい方だ。

「はい、どうぞです」

「「・・・・・・・・」」

 俺と透ちゃんのやりとりを、無言で見てる(睨む)のは、由希と夾。
 この2人って、透ちゃんに気があるんだけど、自分の気持ちを言おうって勇気が皆無だし、それで俺を批難してもな・・・・。
 まっ、実力行使してこないから問題ないけど。
 それに、この程度(一般人よりは十分過ぎるくらい強い)に負ける俺じゃないしな。

「由希も夾も食べないのか?
 食べないなら、俺が貰うぞ」

「「食べるよ!」」

 見事シンクロしてる。
 結構仲良いと思うんだが・・・・・・悪いんだよね、透ちゃんに気がある2人でもあるし。(笑

「う〜ん、若いね」

「そうだな」

 この程度でムキになってるしな。

「六道君」

「なんだ?」

「ここら辺一体を、また祓ってくれないかな?
 最近、悪霊が少しづつ集まってきてさ、ちょっと不安なんだよね。
 あっ、勿論お金も払うからさ」

「了解、後で祓っとくよ。
 あと、金はいらん。
 透ちゃんのご飯で十分だ」

 草摩の呪いに反応するのか、草摩の周りには悪霊が集まりやすい。
 草摩本家には、強力な結界があり、定期的に悪霊の掃除をやっている。
 ここは、紫呉個人の持ち家だし、余り強力な結界ではない。
 弱くは無いのだが、数で来られたら破壊される代物だ。
 前は、悪霊の数が増えてきたら、GSを雇って・・・・・って感じで、やってたらしい。
 最近は、俺が偶に避難所(俺的に)として寄り付く為、俺が祓っている。
 俺が透ちゃんを始め、紫呉・由希・夾達と知り合ったもの、今日みたいに、俺が冥の手料理から逃げてきた為だ。
 人の縁とは、不思議なものだな。
 あれは何時だったかな・・・・・・少し前の事だ。(別に忘れたって事は無いぞ、ただ正確な日付を覚えてないだけだ!大体で良いなら覚えてるぞ!!)
 あの時、俺は逃げていた・・・・・・無論、冥の手料理から。




「ふぅ・・・・今日は何とか逃げ出せたな。
 それにしても、みんな酷いよな。
 お義母さんは、冥から式神奪って・・・・・アジラで下半身のみ石化させ、サンチラの電気で麻痺攻撃。
 蛍は、ルシオラだった時に対ベスパ戦で使用した麻酔攻撃。
 ひのめは、俺を燃やすし・・・・・・フミさんは、俺のえっちぃ本を処分するし・・・・・。
 毎回毎回、俺を生贄にしないでくれ・・・・・・・はぁ〜」

 ため息をつき、周りを確認する。

「ここってどの辺だ?
 捕まらないよう、俺が来た事無い方向に走ったし・・・・まっ、いいか」

 周り、霊の気配がするが、山の中だし、人に迷惑かけないから別にいいでしょ。

「きゃぁぁぁぁ・・・・・・!!」

 !!

「悲鳴か・・・・・・・コッチだ!!」

 俺は走り出す。
 見知らぬ他人がどうなろうと俺には関係ないのだが、自分の手の届く範囲、今みたいに俺の近くで起っている事で、俺に何かできることがあるのなら躊躇わない、助けてみせる!
 俺のいた場所から、あまり離れて無かった事が幸いし、悲鳴をあげたと思われる女子高生に襲いかかろうとしている悪霊が見えた。

「間に合ったな・・・・・・・闇の刃!!」

 俺の刀から放たれた闇は、悪霊を切り裂く。

「ちぃ、一匹だけじゃなかったか」

 周りを確認すると、数多く悪霊が集まっている。
 まあ、俺にとっては何でもないのだが・・・・・・飯食ってないから運動したくないんだよね。
 って事で

「文珠・・・・・悪霊浄化」

 文珠に『悪』『霊』『浄』『化』の文字を入れ、使用する。
 俺の力で作ってる文珠なんで、この山にいる全ての悪霊を祓ってしまったと思う。
 まあ、普通の霊には効果ないんで大丈夫だろう。

「大丈夫か?
 怪我してるなら治療するから、遠慮なく言ってくれ」

 悪霊が消え去った事を確認し、座り込んでいる女子高生に怪我が無いか聞いてみる。
 女の子なんで傷が残ったら嫌でしょ?
 まっ、冥に傷つけた奴は、俺的にお仕置き・・・・もとい、教育的指導だな。
 何故かこの教育的指導の内容を知った蛍とひのめは、顔を青くしながら震えてたけど・・・・・まあいいか。

「えっ・・・・あっ・・・だ、大丈夫です」

 顔色悪いから、無理しちゃいけないよ。
 って事で

「よっと・・・」

「えっ、わわわっ〜」

 自力で立てないようなので、抱きかかえる。
 まあ、お姫様だっこ、って言われてる奴だ。

「とりあえず、家まで送るよ。
 まだ足に力が入らないようだし・・・・。
 それに、また襲われるかもしれないしね」

「そ、そんな・・・・。
 助けていただいたのに・・・・・・・・って、わわわっ!
 も、申し遅れました!!
 私、本田透と申します。
 助けていただき、ありがとうございます」

 礼儀正しい子だな。

「俺は、六道忠夫。
 わかってると思うけど、一応GS。
 それより、怪我が無くてよかったね」

 なでなで・・・・。

「・・・・・・・はうっ!!」

 ん?
 顔が赤くなってるが、風邪か?
 そーいやー流行ってるんだっけ?
 蛍やひのめの友達なんかも顔が赤いし、他の先生方も顔が赤かったな。
 よし、俺も風邪ひかないよう注意しておこう。

「で、家って何処?」

「あ、あっちです」

 透ちゃんの家があると思われる方向に歩き始める。
 冥の時も思ったけど、女の子って軽いね。

「透ちゃんさ、もしかして山の中に家があるとか?」

 ふと、頭に浮んだ疑問をぶつける。
 暇なんだよね、悪霊は完全に祓ったし。

「はい!
 山の中にお家が建ってるんですよ。
 でも、私は居候さんなんですよ。
 由希君や夾君、紫呉さんのご厚意で泊めていただいてるんですよ」

 居候か・・・・・・って、今の名前ってみんな男だよな、大丈夫・・・・・なんだよね?
 まあ、この様子じゃ大丈夫そうだけど。

「親戚の家とか?」

「いえ、由希君と夾君はクラスメイトさんです」

 ・・・・・・・・・この子に惚れてるのか?

「親切な人でよかったな」

「はい!!」

「・・・・・・・・ん?
 あそこか?」

 明かりが灯っている家が見える。
 透ちゃんが居候している家だろう、他に家はみあたらないし、それに、山の中に住もうと思う奴は少ないだろう・・・・・ワンダーホーゲルは除外。

「はい!!」

 チャイムを鳴らして・・・・・・・・ん?
 草摩・・・・・あの一族か?
 まっ、いいか。
 ピンポーンっと・・・

「はいは〜い」

 着物姿の男が現れた。
 透ちゃんと一緒に住んでるのは3人って言ってたし、年齢的に同級生じゃないだろう、って事で紫呉って人か。

「紫呉さん、ただいまです」

 正解。

「帰り、透ちゃん。
 この人は?」

「六道さんです。
 そこで助けていただいたんです」

「助けて?」

「悪霊に襲われていたのでな。
 一応、これでもGSだ」

「ふ〜ん。
 まっ、あがってけば?
 僕の新妻を助けてくれたお礼もしたいし・・・・・。
 ああ、僕は紫呉、草摩紫呉さ」

 新妻って・・・・・違うだろ。

「紫呉・・・・誰が誰の新妻だって?」

「本田さんに対して、何ふざけた事言ってるんだ?」

 奥から現れた青とオレンジの少年達。
 この子が、由希や夾だろう。

「いや〜、冗談だよ、冗談。
 六道君も気にしないでね」

「ん?
 客か?」

「「なっ!!!!」」

 やっと此方に気づいた2人だが、俺が透ちゃんを抱きかかえてるのが気に入らないのか、殺気丸出し。

「紫呉・・・こいつは何だ!?」

 と、声に出してるのが、オレンジの少年。

「・・・・・・・」

 無言で睨んでるのが、青の少年。

「あっ、由希君、夾君、ただいまです。
 この方は六道さんです。
 帰り道に助けていただいたんですよ」

 このわかり易い少年達の気持ちに気がついてないのだろうか?

「「助けて・・・?」」

「悪霊からだ。
 一応、GSだからな・・・・。
 で、これは透ちゃんが一人では立てないからだ」

 これとは、お姫様だっこの事だ。
 こっちの事情を説明するが、全く関係ないって顔で睨んでくる。
 事情は兎も角、抱きかかえてるってのが気に入らないらしい。

 これが、本田透と始め、紫呉・由希・夾達との馴れ始めだ。




「あっ、言い忘れてたけど。
 六道君の奥さんから電話があったよ。
 迎えに来るんだって・・・・・」

 ・・・・・・・・・・・何ですと?

「今・・・・・何て言った?」

「奥さんが迎えに来る、って」

「・・・・・・・・・・わかった。
 紫呉、これ渡しておくから、悪霊は自分で祓ってくれ。
 透ちゃん、ご飯美味しかったよ。
 由希、夾、またな」

 紫呉に文珠を数個渡し、透ちゃんのご飯を褒め、由希・夾に挨拶する。
 で、素早く逃げる準備を始めた。

「ここが駄目なら、妙神山か?
 いや、妙神山では駄目だ、すぐにばれる。
 なら・・・・・・・月神族の住む月面か?」

 ブツブツ何か言いだした俺を、不思議そうに見つめる8個の目。

 ピンポーン!

 ビクッ!!

「はーい」

 透ちゃんが玄関に急ぐ。
 もう来たのか?

「六道さーん、奥さんが来ましたよ」

 もう逃げれんな・・・・・・・神族でも魔族でもいい、誰か助けて!

「あっ〜、たー君〜!」

「や、やあ冥。
 どうしたんだい?」

 たぶん何時も通りの笑顔で答えれたと思う。
 背中は、汗がだらだらと流れてるけどね。
 紫呉・由希・夾、そんな目で俺を見るな!!
 俺は何時も通り元気だぞ!
 辛くなんか無いぞ・・・・・・・たぶん。

「たー君を〜迎えに着たんだよ〜。
 もう〜、ご飯もできたし〜、帰ろ〜♪
 お母さまも〜、蛍ちゃんも〜、ひのめちゃんも〜、フミさんも〜、み〜んな待ってるよ〜」

「そっ、そうだな。
 じゃあ、帰るか」

 ・・・・・・・・みんな捕まったのか。
 文珠幾つあれば足りるかな?

「じゃ〜ね〜」

「はい、また来てください」

 俺たちは帰り始める。
 ・・・・・・・結局、逃げられなかった。

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ・・・・・・・・」

 で、家に帰って冥の手料理を食べたが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・冥以外、文珠のお世話になりました。
 俺が文珠を使えてホント良かったよ。
 お願いだから冥、料理だけは止めてくれ!!
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